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「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?

著・今井 むつみ
相手に正しく理解してもらうことは、相手の思い込みの塊と対峙していくことです。そして相手を正しく理解することは、自分が持っている思い込みに気がつくことでもあります。
この本を手に取ったきっかけは、会社のとあるコミュニティーで、”コミュニケーションにおけるノイズ”という話が盛り上がったから。
メンバーに仕事の説明をしても、人によってそれぞれバックグラウンドが異なり、情報をどこまで伝える必要がある/ない、と考えるのが大変で、その過不足できちんと情報が相手に伝わらないことがある、あるいは間違った情報の受け取り方をすることがある、そうした伝えたい内容が伝わらない、双方の間にあるこの”ノイズ” について考えたい、というものだった。”ノイズ”と表現しするのは、面白いな、と思った。
その人は単に”ノイズ”と言い捨てるのではなく、それを探求したいという興味も持っていたこともあり、何度かその話をすることになるのだが、その内に私の頭の中でも 「なぜ伝わらないのか」ということを考えるようになり、そこに本書が書店で目に入ってきたのだ。
著者である今井むつみさんは以前から知っていて、そのきっかけは「ゆる言語ラジオ」というラジオ番組だったのだが、そこで言語の発達のことを話されているのと、自分の子供が幼いことに共通項を得て、「言語の本質」という著書も読んだ。言語というご自身の研究における知見が含まれて書かれているため、安心して手に取ることが出来るのだ。
この本で書かれているのは、そもそもの出発点として、「相手に全部伝わらなくて当たり前」という身の蓋もないところから始まっている。何故なら、一人ひとりの“認知の仕方”が異なるからだ。
例えば、いま私が ”猫” と言った時、あなたはどんな猫を頭に思い描くだろう。
白い猫か黒い猫か茶色い猫か、足の長い猫か足の短い猫か、細っそりした猫か太った猫か。
猫という言葉一つとってみても、お互いに思い描く猫の姿は全く異なる。
だからこそ人は言葉や絵や音を使って伝えようとするのだけれど、その説明で殆ど同じ猫を想像できるかは怪しい。
黒くて足は短くてやや太り気味の猫。耳は片方が下に向いていて、髭はピンと伸びている。
遠いところをぼうっと眺めていると思いきや、指を差し出そうとしたこちらの動きに俊敏に反応して身構えてくる。その目は青というよりも水色に近く、警戒心を隠さない。
こう書いた時、本当に私の頭の中で動いている猫と、あなたの頭の中の猫は同一なのだろうか。
その答え合わせができないように、伝えた内容がそっくりそのまま相手の理解した内容であるかを確認することは困難だ。
もしかしたら、相手は毛の長い猫を想像しているかもしれない。私は毛の短い猫を想像しているのだけども。
情報伝達には言葉も時間も制約があるので取捨選択が必要だ。
しかしこの取捨選択は、相手の認知の働きにそのまま影響する。
何を言ったか言わないかで猫の毛の長さが変わるように、言ったはずの内容であっても、相手は違う猫を想像していたりする。
繰り返しになるが、そこに潜むのは一人一人の”認知の仕方”が異なることによるもので、そうした仕組みやよくあるバイアスを知ろうとすること、さらには相手の感情で話の受け止め方もかわるので、感情を知る事も大切である、とこの本は説いている。
大切なのは、全部伝わらなくて当たり前、だって認知の仕方が違うのだから、と肩の力を抜く事だ。
なんで分かってくれないのか、とイライラするよりも、全部は伝わらないのだから、大事な点だけ理解してくれるように伝え方を考えてみよう、と一歩下がって考えてみるのが良いのかもしれない。
もしあなたが伝わらないイライラを持っているなら、少し視野を広げてみる、という意味で、この本をおすすめしておきたいと思う。

自分の思考に向き合おう

日々忙しく過ごしていると、なかなか自分のことや今後のことを考える時間が持てない。そんなことありませんか?
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