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怠惰のウソ

Kindleでお買い得になっていたこの本をたまたま見つけて、気になったタイトルなので読んでみたら意外と良かったのでまとめメモをしておく。
「怠惰のウソ」が教えてくれた、生産性至上主義からの静かな脱却、とでも言えるだろうか。

「怠惰は悪」という刷り込みに気づく

「怠惰のウソ」という考え方をご存知だろうか。これは、私たちが当たり前だと思っている「生産的であることが善で、怠惰は悪」という価値観に、真正面から疑問を投げかける視点だ。
今の世の中を見渡してみると、確かにその通りだと思う。SNSには「他人が休んでいる間に努力して差をつけよう」といった自己啓発的な投稿が溢れているし、スマホを見たりゲームをしたりすることは「時間の無駄」として厳しく糾弾される。まるで、私たちは常に何かを生み出し続けなければならない機械のように扱われている。
そして、もしその競争に乗り遅れて社会的に不利益を被ったとしても、それは「自己責任」の一言で片付けられる。なんとも息苦しい世界ではないか。

価値観のルーツを辿ってみると

この本を読んで興味深かったのは、この「怠惰は罪」という価値観が決して普遍的なものではないということだった。著者は、それが工業化や帝国主義、奴隷制といった歴史的背景と深く結びついており、資本主義と特定のキリスト教宗派に由来することを解説している。
つまり、私たちが「当然」だと思っているこの価値観は、実は比較的最近に作られた文化的な産物に過ぎないのだ。それなのに、いつの間にか私たちの内面に深く根を下ろしてしまっている。なんとも巧妙な話である。

自分の人生を振り返ってみる

この本を読みながら、自分のことを思い返してみた。確かに私も、典型的な「勤勉美徳」の価値観で育った。子供の頃にゴロゴロしていると注意され、暇な時間があると不安になって何かをしていたくなる。社会に出てからも、とにかく懸命に働くことが正しく、そうする必要があると思っていた。そうでない自分には価値がなくなってしまう、とも。

ところが、子供ができてから、私の中で何かが変わり始めた。それは劇的な変化ではなく、まるで季節が移ろうように、ゆっくりとした変化だった。
一言で表現するなら、「スピードが変わった」のだ。

以前は忙しくしていることが当たり前だったのに、今はその忙しさがピークアウトした感覚がある。自分でコントロールできないことが増え、それに戸惑うことも多いけれど、明らかに以前とは違う生き方をしている自分がいる。

古い価値観からの静かな転換

昔「ダウンシフターズ」という本があったことを思い出した。ギアを下げて、もっとゆっくり生きることの大切さを説いた本だった。今思えば、あれも「怠惰のウソ」からの脱却を提案していたのかもしれない。
この本を読みながら、今自分に起こっている変化が、古い価値観からの転換なのだということを改めて確認できた気がした。もちろん、著者も言っているように、長年染み付いた価値観をすぐに脱ぎ去ることは困難だ。どうしたって時間がかかる。
私自身もまだ古い価値観に引きずられている部分が多い。それでも、「怠惰のウソ」から少しずつ脱却して、本当に自分にとって大切なものに集中できるようになりたいと思う。そして、大きな文脈の中で他人も自分も、もう少し優しく理解できるようになりたい。

おわりに

生産性至上主義が支配的な今の時代に、「怠惰」を肯定的に捉える視点を持つことは、ある種の勇気が必要かもしれない。でも、そんな視点があることを知るだけでも、私たちの心は少し軽やかになるのではないだろうか。
時には立ち止まり、ぼーっとし、何も生み出さない時間を過ごすことも、実は人間にとって必要で大切なことなのかもしれない。そんなことを、この本は研究データも引用しつつ、静かに教えてくれる。

何かに追われて気がなかなか休まらない人や、今の働き方に疑問を持っている人がいたら、この本を読んでみるのは如何でしょう。

自分の思考に向き合おう

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