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考えすぎる私のあり方

“これまでの経験にもとづいて自分をとるに足りない存在だと決めつけたのは、私たち自身なのだ。私たちはこの部分を外からは見えないように隠し、周りに受け入れてもらうためには、それ相応の振る舞いをしなければならないと思い込んでいる。本当はけっしてそんなことはないというのに。そして、この氷山が何かに衝突して、自分の隠れた自我に目を向けざるをえなくなるまで、私たちはその生き方を続けようとする。”

著・ラリタ・スグラニ 、翻訳・井上大剛

突然だが、HFA (high-functioning anxiety)” という言葉は知っているだろうか?
日本語で高機能不安症というようだが、私自身は知らなかった。しかし、仕事や家庭のことでぐるぐると考えることもあり、何か内的原因に立直したいなと思っていたところ、ふとこのタイトルの本が目に入ってきた。
300ページ超あり、読むのに時間がかかりそうだと思いつつ、どこか自分にあてはまりそうな内容が含まれていそうだなと思い手をとった。

そもそも、HFAとは何だろうか。少し長いが、本書内から以下を紹介する。

高機能不安症 (HFA)とは何か?

さて、本題に入る前に、高機能不安症ー本書ではHFA (high-functioning anxiety)と呼ぶものについて、ひとつはっきりさせておこう。これは、いわゆる「抑制不安障害(debilitatinganxiety)」と呼ばれる、仕事をしたり、普段の生活を送ったり、人間関係を維持したりすることすらできなくなるような強い不安とは別物だ。私をはじめHFAを持っている人々は、内面では不安の症状が起きているものの、外見上は問題なく生活を送れている。つまり、自分自身が問題ないと思っている部分を世間に見せつつ、「本当の姿”不安を抱えた、人には見せたくない部分ーを隠しているのだ。

ちなみに、アメリカ国立精神衛生研究所の推定では、アメリカの成人の31%が人生のどこかで不安障害を経験しており、イギリスでは2022年から2023年にかけて、女性の約37%、男性の約30%が高いレベルの不安を訴えているとされる。
じつのところ、こうした人々のうちのかなりの割合が、現在進行形でHFAに苦しんでいる可能性が高いわけだが、それでもHFAはいまのところ不安障害とは認められていない。理由は、HFAを持つ人は日常生活をそれなりにうまく送れているとされているからだ。だがHPAの影響が強くなれば、生活の質が落ち、強い孤独感や疎外感にさいなまれる可能性もある。
HFAは、自分が「とるに足りない、不完全な存在」であるという気持ちに根ざしている。HFAの人は、はた目には有能で成功者のように見えることも多いが、内心では強い不安や自己不肩を感じ、失敗の恐怖におびえている。結果として、信じられないほど高い基準を自分に課し、人生のあらゆる面で常に完璧を目指そうとしがちだ。何かを成し遂げるために常に動き回りつつ、ほかのみながうまくやっているかどうかを確認する役回りを積極的に引き受ける。だから一見、なんでもこなせる、強くて自制心の強い人間に見える。だが心の中では、ほかの人には見えない別のストーリーが渦巻いているのだ。
(本書内から抜粋)

私は自分のことを、有能な成功者と思ったことは全くないのだが、心のうちで時に不安を感じたり、自分よりも周りを優先したり、あるいは不完全さを感じていたりと、該当する要素が多い。
これを読み進めながら、分かり味が深い説明も出てきて、「私はHAFなのかもしれない!」と共感せずにはいられなくなる。

HFAに苦しむ人は、自分の認めたくない部分を普段からひた隠しにしていて、その不安のせいで、常に成果を挙げようと焦っている。少しでも自分を価値ある存在だと思えるようにもがいているが、ありのままの自分を受け入れられるようになるまで、本当の意味でそれが実現することはない。そして彼らは、承認欲求を満たすことでそれを紛らわせるというやり方に飛びついてしまうしたとえそのせいで、自分を不幸にすることになっても。
だがじつのところ、自分の価値は、周りがそれを認めてくれるかどうかで決まるわけではない。自分自身といかに関係を築くか、自分をいかに大切にするか、自分が何を必要としているかに耳を傾け、それにどう応えるか、波長の合わないエネルギーからいかに自分を守るか。あなたの価値を決めるのは、そこなのだ。
(本書内から抜粋)

そもそもHAF的な人は、自分自身に満足できず、外に理由や承認を求めて自分を蔑ろにする。それによって不安が解消されることはなく、その不安に対処するために、また外から動機付けが行われ、それが行動パターンの一つになってしまう。
感受性が強く、”繊細” が故に受け取る情報量が多く、それに応じる思考量も増え、その増加に相関した心の動きとして不安も生じるのだ。
自分のことを鈍感だと思っていたのだが、内省の解像度がどうやらかなり高いようで、感受性が強い方だったようだ。それをアウトプットとして出さない、もしくは選択・制限していることが、良くないなと思うようになり、そこにHAFという性質を知り、自分の理解がより進んだ。

この本に書かれているのは、
  1. (HAFの性質を持っているかもしれない)自分を知り
  2. パターンと原因を振り返り
  3. 対処法を知り
  4. 繊細さとの付き合い方を身につけ
  5. 自分自身に優しくする方法を学ぶ
ということを、言い換えると 発見→解読→発展→受容→解放 といった順序で紐解いていく。

現代は色んな病や性質に区別したり名前をつけられたりする複雑で高度な状況ではあり、HAFもその一つではあるのだが、もし自分に思い当たる節があるのなら、自己理解の一つとして読んでみても良いかもしれない。

最後に、HAFの特徴をAIにまとめてもらったので、以下表として貼っておく。
当然ながらこの全てに当てはまるようなものでもないし、これの一つあるいは複数あるかは私はHAFなのだ!と騒ぐようなことでもない。
あくまで、そうした傾向があるかもよ、位のお話として。

HAF(高機能不安症)の特徴・特性一覧表

外面的特徴

分野特徴・特性具体的な内容
仕事・学業高いパフォーマンス成績優秀、昇進が早い、プロジェクト成功率が高い
時間管理極めて規律的遅刻しない、デッドラインを必ず守る、予定を詰め込む
責任感過度な責任感他人の仕事も引き受ける、断れない、リーダー役を担う
社会的評価周囲からの信頼「頼れる人」「しっかりした人」と評価される

内面的特徴

分野特徴・特性具体的な内容
思考パターン完璧主義小さなミスも許せない、100%を求める、白黒思考
不安症状慢性的な心配将来への不安、最悪のシナリオを想定、常に緊張状態
自己評価低い自己肯定感成功しても満足しない、他者と比較する、自己批判的
恐怖心失敗への強い恐れ批判されることを恐れる、拒絶への恐怖、評価不安

行動パターン

分野特徴・特性具体的な内容
準備行動過度な事前準備何時間も前から準備、複数のプランB作成、リスト作成癖
確認行動繰り返し確認メール誤字チェック、資料の見直し、スケジュール再確認
回避行動先延ばしの回避早めの行動、余裕をもったスケジュール、準備の準備
人間関係他者優先断れない、期待に応えたい、気を遣いすぎる

身体的症状

分野特徴・特性具体的な内容
睡眠睡眠障害寝つきが悪い、夜中に目が覚める、悪夢を見る
身体症状ストレス反応頭痛、肩こり、胃痛、動悸、めまい
疲労感慢性的な疲れ常に疲れている、休息しても回復しない
食事食事の乱れ食欲不振、暴食、消化不良

認知・感情面

分野特徴・特性具体的な内容
注意力過度な注意集中細部への執着、マルチタスク、常に何かを考える
感情調整感情の抑制不安を表に出さない、感情をコントロールしようとする
思考の反芻繰り返し思考同じことを何度も考える、過去の振り返り、未来への心配
コントロール欲求制御への執着すべてを管理したい、予想外を嫌う、計画通りに進めたい

対人関係

分野特徴・特性具体的な内容
コミュニケーション過度な配慮相手の気持ちを読みすぎる、言葉を選びすぎる
境界設定境界線の曖昧さ断れない、自分の時間を犠牲にする、他人の問題を抱え込む
承認欲求外的承認への依存褒められたい、認められたい、評価を気にする
孤独感内面の孤立理解されない感覚、一人で抱え込む、助けを求められない

リスク要因

分野特徴・特性具体的な内容
燃え尽きバーンアウトリスク疲労の蓄積、モチベーション低下、うつ症状
健康問題長期的影響免疫力低下、生活習慣病、心身症
人間関係関係性の悪化期待の押し付け、完璧主義の他者への投影
自己実現本当の自分の喪失他者の期待に生きる、自分の欲求がわからない

自分の思考に向き合おう

日々忙しく過ごしていると、なかなか自分のことや今後のことを考える時間が持てない。そんなことありませんか?
あるいは、一人で悩んでいて、なかなか人には相談できない。
もし、そんな状況にあるのなら、ちょっとだけ立ち止まって考える時間を作ってみませんか。
なかなか人に言えない悩みがあるなら、まずは言葉にしてみませんか。
そのお手伝をします。対話の中から発見や納得が生まれることもあるんです。
立ち止まって、自分の思考に向き合ってみると、何かが見えてくるかもしれません。

一緒にその時間を作って見ませんか?