壮大なスケールだった。
宝石の国というタイトルの漫画が期間限定で全話無料だったので2日間で一気に読んでしまった。
話の内容は、ざっくりと言うと、人間がいなくなった世界で、人間のような人間ではない者達が、遥か長い時間をかけた過程で醸されていく、発見や経験や理解や感情、そして願いの行く末を見守ることになる物語。
話の内容が深いのだが、キャラクターの純粋性により語られる言葉が、飾り気がないが故に美しく感じ、時に詩的にすら思える。そして先生や月人の含蓄のある言葉に感心させられる。
作者は、人間の弱く愚かで醜い姿を過去のものとして人間という種の滅びを描いているが、それと同時に人間の純粋で無邪気で愛おしい姿を、人間なき世界の現在と未来に投影している。だからこそ、漫画が持つ哲学的なテーマがオブラートに包まれているというところがあるように思う。
敵か味方か、背後にどのような策略があるのか、というような事を考えながら見ていたのだが、そういう枠には収まらない、とんでもないスケールの話であり、そうした(今考えると)無駄な力がいつの間にか後半に近づくにつれて、どういう最後を描くのだろう、という好奇心に変わっていた。
その好奇心を掴んで放さなかったのが、シナリオだけではなく、作者の独特な間。
行間とでも言えるような、テンポや、セリフの無い絵の構成がまた良い。哀愁のようなものを感じるそれが、漫画の文学性を上げているようにも思える。
伏線回収のお見事さもさることながら、107話「終わりに」の数ページ、特に主人公の表情の線。万感の想いが去来する見事な仕事を見ることができた。これは暫く余韻が残りそうだし、残っている。
諸行無常や輪廻転生を彷彿とさせる仏教観に支えられた世界で展開される物語は、見終わったあとでも、もう一度読みたいし、もう一度読んで理解を深めたくなるような漫画だった。
良いもの読んだ〜。