著・ブリアンナ・ウィースト
訳・松丸さとみ
いまの自分にドンピシャの本だった。
私は自分の感情に対して鈍感というか、うまく言語化ができない。
頭の中で考えがちで、言葉に発することがあまりない。
感情的になる、ということが苦手で、それによって感情を表現することに抑圧が加わる。
人との関係もそうで、自分よりも相手の感情の方を強く感じるので、相手の感情を優先する。例えば、相手が悲しみや怒りを感じていたら、その感情に影響されてしまうし、そわそわする。
私自身が悲しみや怒りを感じていたら、それを口から表現することはほとんどない。自分のか中に閉まったままで、(結果的に)時間経過とともに薄まるのを待つ事が多い。それまでは頭の中でぐるぐる言葉が回る。
…こう書いていくと、言っておいて何だが、感情に対して鈍感、というわけではなく、感情の扱い方が下手、なのかもしれない。
何らか感情の変化があって、それには気づくが、言語化せず、自分の外に出さない。 自分の中で消化してしまいがちで、それは時間が過ぎるのを待つので、その感情に向き合う、というより収まるのを待つ、という意味合いが強い、ということだ。
この本では、感情に重きがあるのではなく、自分の人生をどう生きるか、というところに主眼があり、その要因としての感情がある。
端的にいうと、感情よりも理性を重視する必要がある、というものであり、感情に振り回されるのではなく、感情が何を伝えようとしているのか耳を傾け、理解することが重要であり、そうした出来事あから何を学べるか、そうした自分の人生を生きる”知恵”を教えてくれる。
本の原題は「The Mountain Is You」だそうで、自分自身の問題や克服すべきものなどを山になぞらえて、こう言っている。
「山に直面する」と言うと、「苦難に直面する」だと思いがちです。
でも本当は、山はいつも人生にあったのです。何年も自分の中に溜め込んだ小さなトラウマが、長年かけて積み重なって出来たものです。
(中略)
あなたの山は、本当に生きたい人生と今のあなたとを隔てている障壁です。自由になるため、なりたい自分になるためのただひとつの道は、山と向き合うことです。目の前に山が立ちはだかっている理由は、何かのきっかけが、あなたが抱えている傷を見せてくれたから。その傷は、あなたの進む道を示してくれ、その道はあなたの運命を示してくれるでしょう。
まさに、いま自分に起きていることだと、この一節を読んで思った。
これまで生きてきた歩みの結果、自分の望まない状況、引き起こした状況、そうしたものが様々ある。そしてそれらは、突然に起こったというよりも、積み重ねてそうなってきたのであって、まさに「山」なのだと思う。そうした山を作ってきたのは自分なのだ。
自分に身に覚えのある事柄をグサグサと刺してくるこの本は、読んでいてとても耳が、目が、痛い。 逆に言えば、まさに今自分は山の入り口に立とうとしているわけだ。
無意識には恒常性衝動と呼ばれるものがあるそうで、いまの環境に適応して元に戻ろうとする力、言い換えると変化を拒む力が生物的に備わっているそうだ。いわゆるコンフォートゾーンから抜けられない、という話だ。
この恒常性衝動を克服するため、理性の力を使い、山を登る必要がある。そのための覚悟があるのか。
そんなこと言ってられない。もう追い詰められた。同じことを繰り返して状況は悪化するばかりだ。
本書でもいっているが、“「人生をがらりと変えてくれる」ものは存在しない” のだ。
そういう、いまの自分にブッ刺さる内容だった。こういう本は稀だ。
