目次は以下のようになっており、いま悩んでいるリーダーをはじめとした社会人にとって、ヒントが見つかるかもしれない本になっている。
- 序章 なぜ東洋思想がリーダーに必要なのか
- 第1章 どのように人を動かすか
- 第2章 どのように人を育てるか
- 第3章 問題社員をどう評価するか
- 第4章 別れをどう受け止めるか
- 第5章 どうすれば決断できるのか
- 第6章 どのように自信を取り戻すか
- 終章 悩むからこそリーダーである
かくゆう私自身も悩みの中にいる。
自分自身のことや置かれている状況であったり、未来のことであったり。
行っては戻りの繰り返しであったり、どうすれば打破できるだろうかと考えたり。
理想と現実のギャップで苦しむことが多いが、そもそもそうしたことに対して以下のようなメッセージを本書では送っている。
現状を否定するのではなく、現時点で自分は過去の理想を達成している、と目の前の事実を肯定する思考を持たなければ、私たちはいつまでも幸福にはなれません
これは荘子の”胡蝶の夢”という寓話を引用して著者がコメントしている一節であり、以下のようにも言い換えている。
現実に埋没しすぎるのではなく、異なる視点から多面的に物事を見る。そうすることで現実の見え方が変わり、また「目の前にある幸せ」を味わえるようになるのです。
これはコーチングにも通ずる考え方だなぁと思いながら読んだ。
悩んでいる時は視野が狭くなっている事が少なくなく、客観視して違った角度、違う軸から見てみる、ということで気づきが生まれる事がある。
難しいのは、なかなか自分一人の思考では限界があるということ。
それを自覚しつつ、いかに自分で客観視してフラットに関われるか、という試行錯誤を繰り返している日々だ。
行き詰まったら人に相談する、あるいはコーチをつける、ということも手段として大切である。
ところで、禅の十牛図というものを知って非常に感心した。
禅僧が修行を始めるにあたって最初に読むべき書物とされる禅宗四部録で紹介されている絵画のことで、悟りのプロセスを示した修行者への道標になるものらしい。
人間が牛を捕まえる過程を描いており、牛を求めて旅立ち、さまざまな過程を経ていくのだが、その過程が自分探しのメタファーにも捉えることができる。
私がいまいるのは、10あるうちの4つか5つ目の間くらいだろうか。
十牛図の内容はとても示唆に富んでおり、これはまた別の機会に触れたいと思うが、この十牛図を著者なりにリーダーの成長に変換するとこう言えるのではないか、と書かれている。
- ステージ1:自分を探す
- ステージ2:自分を見つける
- ステージ3:自分を手放す
- ステージ4:ありのままを受け入れる
- ステージ5:他者のために生きる
そして、たびたび困難に直面すると、再びステージを戻ってしまうこともあり、行ったり来たりしながら成長するのだ、と。
その考えにはとても頷ける。
出来きていると思っていても、気づけば振り出しに戻っている事を自覚したりして、行ったり来たりするのが常だ。
そこで自分の成長のなさに落胆するのだけど、そうした行きつ戻りつを繰り返す過程こそが成長プロセスなのだと本書では応援してくれる。
悩みを抱えている人に、そっと渡したい一冊だった。