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限りある時間の使い方

“希望を捨てたとき、あなたは自分の力で歩み出すことができる。”

限りある時間の使い方
著・オリバー・バークマン / 翻訳・高橋 璃子

良い本だった。

自分の寿命が80歳ほどだとした場合に、人の一生はざっと何週間になるかと思うか?
1万週位だろうか。

なんと、人生は「4000週間」になるのだ。
こう数字にされると意外と短いな、と思う。もう1/3は使い切ってしまった、というよりも、折り返し地点へと進んでいる。

意外にも短い自分の一生。それをどう使うか。
こう問うた時、本書の中で哲学者ハイデガーを引用し、存在こそが時間なのであり、時間が自分の外にあるようなものではないといったことを述べている。

その点について著者は、息子の将来を考え、息子が最善の将来を手に入れるために、今の時間を利用しようと考えたことに対して、「時間を有効活用しようと考えるのは、この子を自分の道具として使うことだ。将来に不安を感じなくて済むように息子にあれこれさせて心の平穏を得ようとしていただけなのだ」と告白する。
そして、難破船で溺死した息子の死を悔やんだロシアの思想家の言葉を引用する。
「子供は成長するものだから、子供の目的は成長することだと思われている。だが、子供の目的とは本来、まさに子どもでいることなのだ。自然は1日しか生きられないものを蔑ろにはしない。一瞬一瞬に、自然はその全てを注ぎ込む。人生の報酬は、その流れの只中こそ存在する。後になってからではもう遅い」
とても沁みる言葉だ。

これは子どもに限った話ではなく、どんな人間の存在にも言えること。
ならば、今を最大限楽しもう!と言えるが、それもまた同じ問題を抱えている。
つまり、将来のために時間を有効活用しようだとか、いまこの瞬間を楽しもうだとか、そうした目的化した時間の使い方は時間を「道具」として使うような行為をしていることを意味している。
本来自分とは切り離せない内側にあるものを、外側にあり使いこなせるかのように振る舞うのは成り立たない。
「人生から何かを得ようとするな」という言葉があるように、ただ静かに「いま」から逃れられないことを受け入れよう、と言っている。

これはとても深い指摘だ。
僕らは夢とか希望とか理想とかを頭の中に描いて、そのために「いま」何をするか、時間をどう使うか、ということを考えがちだ。言い換えると、ゴールに対する現在のギャップを埋めるために何をするか、というアプローチを取りやすい。
実際のところ、著者はゴールを達成するため、タイムマネジメントによる効率化のスキルを磨き・高め長年実践してきたが、隙間を作った分だけ新たなものが入り込み、結局のところイタチごっこだという。

本当に大切なことは、あらゆる幻想を手放して、いまを受け入れること。
受け入れ、逃げることなく目の前のいまに集中する。
それが、自分を生きるということを理解する道のりになっていく。

時間は自分であり、自分は時間である。
「いま」に日々集中していると、自分と時間の境界線がなくなるのかもしれない。
それを没頭だとか熱中だとか、あるいは夢中と呼んだりするものなのだ。

そんなことを考えさせられる、良い本だった。

あなたは何に夢中でいたいですか?

自分の思考に向き合おう

日々忙しく過ごしていると、なかなか自分のことや今後のことを考える時間が持てない。そんなことありませんか?
あるいは、一人で悩んでいて、なかなか人には相談できない。
もし、そんな状況にあるのなら、ちょっとだけ立ち止まって考える時間を作ってみませんか。
なかなか人に言えない悩みがあるなら、まずは言葉にしてみませんか。
そのお手伝をします。対話の中から発見や納得が生まれることもあるんです。
立ち止まって、自分の思考に向き合ってみると、何かが見えてくるかもしれません。

一緒にその時間を作って見ませんか?

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